名古屋の友禅染めとは尾張藩主徳川宗治の頃(1730~1739年)、名古屋市を中心にした地域では尾張文化が華やかで、京都、江戸などから各種の職人が行き来していました。 友禅の技法もその時期に友禅士が従来し、その技法が伝えられたと言われています。現在まで江戸時代末期の染色品が保存されています。また染色関係の品としては、 伊勢形紙の販売の記録が残されています。
名古屋で友禅染が定着した理由は、尾張・美濃が古くから絹織物の産地で、尾張藩の地上産業振興策により、生産が奨げきされたことなどがあげられます。
"工程 1"
下絵
あらかじめ考えた図案通りの模様を、仮縫いした絹の白生地に青花液で描きます。 青花は露草の花の汁で、水で洗うと落ちる性質があります。
"工程 2"
糸目糊置
下絵を描いた生地の裏側より伸子を張り、下絵の線に沿って筒紙に入れた糊をしぼり出して置きます。糊を置くのは色挿しのとき隣の色同士が混ざり合うのを防ぐためです。
"工程 3"
伏糊置
色挿しした部分に地色染の染料が染み込まないように、糊で模様をすべて埋めていきます。 糊はもち米、糖、の粉に塩を混ぜて炊き上げたものを使います。糊伏せが完了した後にオガ粉または糠をふりかけ、糊の乾燥を早めると同時に他の生地への糊の付着を防ぎます。
"工程 4"
引き染め
地入れの仕上がった柱の間に張り、25センチ前後ほどの間隔で伸子を張り、立ち姿勢で染めるのに適当な高さに吊るします。 幅広の刷毛を染料に浸してむらのないように塗っていきますが、むらなく染めるのには相当な熟練を要します。
"工程 5"
蒸し
染料を生地に定着発色させるため、蒸枠にかけ、蒸箱に入れて蒸します。
"工程 6"
色挿し
溶かした染料液を糸目糊置の内側に、淡い色から順に挿していきます。染料がにじむのを防ぐため筆や刷毛を電熱器などの弱い火であぶりながら色挿しをします。 色挿しが終わったら蒸気で蒸して色止めをします。
"工程 7"
蒸し
蒸し色挿しをした染料を生地に定着発色させるため、蒸枠にかけ、蒸箱に入れて蒸します。
"工程 8"
彩色仕上げ
湯のしの仕上がった生地の模様部分に、さらに色、柄を筆や刷毛で補充仕上げをします。人物の顔や花の芯など色挿し工程で出来ない模様の細部を加工します。
名古屋地方の土地柄を反映した名古屋友禅の柄は、その独特の“渋”さが愛されています。名古屋地方の質素倹約を気風とする土地柄が色数を控えた単彩濃淡調の「渋い」色使いを生み出しました。 京友禅が華やか、加賀友禅が繊細であるのに対して、名古屋友禅は渋さをその本質とし、その独特の“渋”が愛されています。 手法は「手描友禅」と「型友禅」にわかれ、その名のとおり「手描友禅」は1つひとつ手で描くのに対し、「型友禅」は友禅模様を型彫りにした型紙を下絵の代わりに用い、絵柄をつけていく友禅染です。 300年以上続くこの伝統の技と美は、昭和58年に国伝統的工芸品の指定を受け今日に受け継がれています。
樹光染は自然の草木そのものの形を写し取る独自の染色技法です。色の濃淡によって立体的で美しく、また自然の趣がそのまま伝わってくるような「生きた柄」をお楽しみいただけます。
※樹光染とは伝統工芸士の堀部満久さんが染色特許を取得したオリジナルの技法です。
●その他
着物だけではなくドレス・ネクタイ・バッグなど様々な商品も展開されています。
工房には手描友禅教室があり、名古屋友禅の技法を習うことができます。詳しくは堀部工房のホームページをご覧ください。